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オりオノクリニック月報
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2025年5月

DOHaD(ドーハッド)研究について話します

DOHaD(ドーハッド)研究って聞いたことがありますでしょうか?

DOHaD (Developmental Origin of Health and Disease)の略名です。

精子と卵子の受精時、胎芽期、胎児期の子宮内環境や出生後の乳幼児期の望ましくない環境が、将来的に病気になりやすい素因を決定しており、大人になってからの病気の発症率に大きな影響を及ぼしているという学説に関する研究です。

その起源は、英国の助産師であるマーガレットさんが明治42年から昭和8年にかけて生まれた赤ちゃんの全員の記録を残していたところから始まります。その後、バーカー(Baker)さんは1920年代の新生児の死亡率と約半世紀後の心筋梗塞による死亡が関係していることに気づきました。その当時の新生児の死亡は早産・未熟児・母体の低栄養状態と深く関係していました。それから胎児期の望ましくない子宮内環境と成人期の心臓病発症との関係を調べる研究が始まり、出生時の体重と成人期の心筋梗塞による死亡率が強く関係することが報告されたのです(1993年)。

一方で、第二次世界大戦末期のオランダの冬の飢餓事件の際に胎児期を過ごしていた人は、その後大人になって様々な病気(糖尿病・高脂血症・狭心症・心筋梗塞・腎臓障害)を発症しやすいことが分かりました。

胎児期の望ましくない胎内環境は、大人になってからのメタボリックシンドロームが関係する病気の発症と強くかかわることは事実です。大人になってからのメタボ病発症の素因は、その人の胎児期環境に強く関係しているのです!

なぜ?どういうメカニズムで?これを解明していくのがDOHaD研究です。

胎児期環境と胎児期につくられる臓器との関係。たとえば、子宮内の発育が悪かった赤ちゃんの腎臓は小さく・ネフロン数が少ないことや、胎児期に膵臓のβ細胞に影響を与えており、糖尿病になりやすくなっていることも明らかにされました。

一方 胎児期の望ましくない環境が、胎児のDNAのメチル化に影響を与えて、病気発症と関係することについて研究もすすんでします。難しい内容なのですが、DNAは人体の設計図ですよね。DNAに組み込まれた情報をもとにして人体は作られています。DNAが一部メチル化されると、メチル化された部分の設計図からの情報が読み出しにくくなるのです。ざっくりと言ってしまうと、DNAには完成された設計図があるが、その設計図から読み出しにくい部分があると完成型にはなりにくいってことです。その人を取り巻く様々な環境が、その人のDNAの設計図にメチル化という修飾を与えることで、その結果としてその人の将来の病気発症率と関係していく。エピジェネティクスと呼ばれる研究分野ですね。

これからどんどんDOHaD研究は進んでいくと思います。





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